旅人へ送る10のお題 ten titles of the letter for wanderer


最後の告白綴った手紙
灰と炎に呑み込まれ
伸ばした指を熱く焦がした
それなのに 傷むのは心

遠くへ行ってしまうのですね
私に熱さだけ残して
これは決して恋ではないのです
それなのに こんなに熱く切ないのは
一体 何故なのでしょうね

君を失った代償に
手に入れたのは言葉の断片
繋ぎ合わせて 詩を綴った
それで時間が戻るわけじゃないけど

君の面影 言葉で焼いた
残った灰は 手帳にしまった
さよなら
さよなら
これは恋ではないけれど
この切なさとこの哀しさは
愛しさにも置き換えられるから
私は君に、さよならを言う

そして今日も 心を綴る









『旅立つ君が残した者は』







たとえそれが偽りでも
次の瞬間に消えてしまううたかたの夢でも

あなたがくれる言葉なら

私はそれでよかったんです


      [人の言の葉 嬉しからまし]






破いたのは思い出ではなく
けじめがつかない私の心

『ねえ、私、あの頃君のことが好きだったのよ』
笑い混じりに言えるほど
まだ 心の整理が付かず
『ねえ、貴方、昔あの人が好きだったでしょう』
バレバレの想い指摘されるたび
掠れ汚れていく私の心

ずっと手帳にしまってた
一枚の写真 一通の手紙
全てを破いて 灰皿で燃やして
その時零れた涙 一滴
一体 何に対してか

「さよなら」



『出せない手紙をたずさえて』





不意に吹いた風に思い出す

僕は旅人
遙かな道を歩き続ける旅人

待っていると言ったその声
僕の名を呼ぶ やさしい声

いつの日か
あの丘を越えて
旅だった日のように

いつの日にか
あの丘を越えて
辿りつくことが出来るように

今も 君の声だけが
僕の確かな標

「耳に残るは君の歌声」





拝啓 親愛なる君へ

告白します。私は君が嫌いでした
我儘で傲慢で、常に何かを欲していて
フラリと出掛けたと思ったら 数ヶ月も音沙汰なし
そんな君の身勝手さが 大嫌いでした。

君はまた行くのですね
自分の信念押し通して
君の心を焦がす信念は
一体なにを糧にして 燃えているのですか

もう君のことなど知りません
心配なんか一切しません
君なんかどうにでもなれば良いのです
泣くなり困るなり 野垂れ死ぬなり
どうぞ お好きに生きなさい
私はもう 泣きません


意地が悪くてシニカルで
甘えん坊で寂しさ抱いた
君のことが嫌いでした
嫌いで、少し好きでした




『前略、親愛なる君へ』



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