遠い国の十の詩 ten poems in far somewhere


揺れる電車の景色
銀白を濃くして
濁った空から玉屑が舞い
忍び寄る闇更に染め上げ

視覚として現れた冬
滅多に見られない風景
遠い異国のように思う
心細く 切なさを孕み

吐く息で曇る窓
耳の奥に響く鈴の音
一ヶ月前に去ったあの人
今頃何処で 何をして

冬の形目に焼き付けて
この景色を忘れないように
寒さで頬を紅に染め
この一時を忘れぬうちに




「雪は窓の向こうに」





主の居ない部屋に
残された菓子一つ

切ない甘みを残して
貴方は何処へ


「長崎カステラ」




君には聴こえたかい?
宇宙に響く汽笛の音が。


アンドロメダを西南に
スワンの星座を東南の
銀河ステーションで乗り換えて
新たな次元へ向かう為
新たな星座を探す為
流星群をくぐり抜け


見つけたら、一番に教えるから
だから、少しだけ、待っててね。


三角形のその先の
カササギ羽ばたくその先へ
銀河のレールを走りぬけ
蒸気を立てて走る汽車
新たな世界の上にある
見知らぬ星座を見る為に


だから時々耳を澄まして
汽笛がきっと、君にも聴こえるから。




「見知らぬ星座の下で」





それは 甘い記憶
はるか海の向こうから
運ばれる 深い風の音色

淡い虹色の瓶の向こうで
見慣れぬ服の君が手を振る

かぐわしい
ここではない何処か
想いをはせて

かすかに残る
それは 遠い夢


「香水瓶の残り香」





『亡国の夢を見続ける姫君
 誰もが忘れた言葉で手紙を書き
 伝説と化した騎士に手紙を書き続ける
 その内容は誰も知らない。』

小さい頃に読んだお話が
ずっと心に残っているの
父様に届く異国からの手紙
見ているだけでドキドキしたわ。
私も手紙が欲しくて
母様にねだっては駄々をこねてた。
見かねた姉様が留学した際
私宛に手紙送ってくれた。
嬉しくて嬉しくて
何度も何度も眺めてた。
まだ読み書きも出来なかったから
宝箱にしまって
時々取り出しては大事にしてた。

それなのに 何故かしら
手紙はいつのまにか 私の手をすり抜けて

今もまだ覚えているのは
押し花が貼られた便箋と
仄かに匂った甘い香り
何が書かれていたかわからず仕舞い
姉様に訊いても忘れたですって。
でもね、私の心の中には
あの手紙はまだ残ってるの
時々心から取り出しては
そっと抱きしめて思い出に浸るのよ
あの物語の お姫様のように。


「読めない手紙が届いたら」



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