花咲く季節の10の詩詩 ten poems of season when flower blooms


世界がベールピンクに包まれたら
それは 春の訪れ
風がささやいて
木々の緑が萌え光る

君をさそって野原に行こう
バスケットにバケットとジャム
野いちごを摘んで
春を味覚で感じようか

野原にはあざやかな花が
ひなたぼっこしながらおしゃべりしてる
どの花が一番に咲いたか当てっこして
冠を作って遊ぼうか

ベールピンクに包まれた世界を
君と、一緒に。


「はじまりの花が咲いたら」





あの日
君を見失ったこの場所で

小さな白い花が
そっと風に揺れるから

ここにいます
僕は、ここにいます

飛び立った君が帰る日を
白い花だけが待っている


「空中庭園で君を待つ」





扉の向こうに広がるは、いにしえの都
道には灯火 いにしえの衣纏った人々が練り歩く
それは、一夜の夢
闇が色を濃くする程に 
地は賑わいを高まらせ
人々の隙間を掻い潜って走るのは
どこから迷い込んだのか、火の子ども
その赤く輝く身体を煤で染め
身を小さくしてひたすら走る

最初に断っておくが、別に火の子は急いでいる訳ではない。
出来ればずっと、この祭りの様を見ていたかった。
だけれど火の子は結局火の子、
ものに触れれば全てを燃やす運命。
だから火の子は自分の身体に煤を塗り
なににも触れぬよう、ひっそり祭りを見るのであった。

ところが火の子にわざと触れた者がいた。
それは道に飾られた 大輪の花
生けし内に摘み取られ
祭りの花と飾られた
その最後の一瞬を
せめて、燃えるように輝いて生きたい。
だから火の子を見つけた時に
花は火の子へ飛び込んだ。

大輪の花は煌々と
祭りの花と成り果てた
その花びらが風に舞い
火の子を優しく包み込む。

祭りが終わったその後も
一夜に咲いた炎の花は
人の心に咲き誇り
火の子と共に語り継がれる。


「花の縁」





大地に咲く小さな太陽
春風になびくお日様のこども

さあ、
恭しく杯を掲げよう
春の光で満たされて
僕らは花になる

「たんぽぽのお酒」





目まぐるしい勢いで
変わる景色を前に
光の眩しさに目を細めつつも、私は
春の景色を目で追っていた。

観覧車の向こうに広がる海
人里離れた所に立つ風車
硝子の巨塔が高々とそびえ
黄金に輝く水面

そして
青空の下で花咲く小道

赤、白、緑がさやさやと
春の息吹を受けながら
その景色も遠い彼方
もう、そこへは戻れない。

それでも。
暖かな光を浴びて輝き
優しい風に揺れるその姿は
永遠に 僕の心の中で
彩を添えるから

僕らの旅はまだ続く
眩しい世界に生きながら。



「ひなたぼっこ」




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