空け者の春葬 written by Suika


『空け者の春葬』
満開の桜の下、「春が嫌い」と貴方は言った
噎せ返る花の香り 温かな日差し
鮮やかに彩られた風景 人々の狂乱
彼女は浮かれた光を嫌い、そして同時に影を好んだ
春の日差しに隠された影 いつかは訪れる終末の闇
「だから私、桜の散り際だけは好きよ」
そう言って笑う彼女は 何故か私を好いていて
そんな彼女を 私は必然と嫌っていた
彼女が春を嫌うのは 同属嫌悪と考察した
生まれながらに華を持ち、人の心を狂わせる
そんな才が彼女にはあり
そして同時に能があった
枯渇した才能の泉
に、飢えた己が身
どんなに努力をしても埋められない
生まれながらの天賦の差
私は 彼女が好む影の中で
一遍の詩を抱いて眠る
愛憎の念を心に宿せ
一片の死を抱いて眠る
その日の夜 大雨が降り
桜の木の下には 空け者の遺詩
薄紅の花弁に埋もれ
空の心を 涙雨の香で満たした

メロンソーダ色の空に
羽根の生えた象が飛ぶ
こんなことを考える
私って 変な子かしら?
ハロー、スターダスト
心を春風に攫われた我らが同志
ようこそ、花心の世界へ
ここでは夜すらも金色に輝く
我らは生まれる世界を誤った同士
屑としか思われなかった過去を捨て
さあ、弔いの宴を開こう
そこから我らは創生される
ハロー、スターダスト
僕らは消滅の中から生まれてくる
ベールピンクから紡がれる世界
今日は共に 夜でも灯そう
クリーム色の海に
スカイブルーの象がたゆたう
こんなこと考える
私 そんなに 嫌いじゃないわ
グッバイ、スターダスト
全てが無になった世界で また会おう
私 その日を 楽しみにしてる
『空け者の春葬』