花火の向こう側 written by Suika

時間の国の話をしようか

地球上の時差という奴は
考えてみると面白いものだね
東京の住民が夢の世界で
朝の訪れを待っている頃
アテネの人々は昨日の夜を始めたばかり
ちょうど一家だんらんを楽しんでる時分かな

一番差が大きいのはフィジーとハワイ
フィジーが明日の世界を朝を迎えた時
ハワイは昨日の朝を過ごしてる
ちょうど出かける頃合で
ママに行ってきますと叫んでいるの
全く、フィジーは嫌なことがあった日は
ハワイに電話するべきだね
洗いざらい話して鬱憤を晴らして、最後はこう締めくくる
「〜だから君は気をつけておくれ。君はまだ、昨日を生きているんだから」
ほら、心優しい気遣いに泣けてくるでしょう?

なんでこうなったんだろう
これはあくまで私の推測だけど
昔むかし、太平洋に許されない恋をした二人がいたのね
それで神様が怒って二人を引き離して
昨日と明日の国に閉じ込めたんじゃないかな
そうすれば二人は一緒にいられないから
同じ海にいて、こんなに近いのに、生きてる世界はこんなに違う。
悲しいよね。
最初は二十四時間ぴったりに世界は離れていたけれど
今では二人が頑張ったおかげでその距離は二十二時間に縮まった
あと一万年くらい頑張れば
二十時間くらいまで縮まるんじゃないかな
ねえ、貴方はどう思う?神様。



地上から上空10kmの世界を
北京から成田までの飛行機内で感じる
テレビにもゲームにも飽きてしまったら
空を眺めながら、退屈しのぎに考えごとをするのが一番
空は夕焼けで色づき、太陽が輝いている
それが天空に咲く花のようであり
今日の終わりを告げる合図のようでもあって、少し寂しい。


こうして私は時間の国をさまよいながら
シートベルトを締め直した
過去にも未来にも行けない私は
こうして一人で今を感じる





機内はもうすぐ、日本に上陸します。
シートベルトをご着用下さい。



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