御伽草子 written by Suika


 おとぎ話を読まなくなって久しい。昔…と言っても中学高校の頃の私は童話が大好きで、毎週のように図書館に行っては世界中の童話を読み漁っていた。
(年少者対象の子ども図書館に座り込み絵本を読む高校生…。今思うと、なかなかに痛々しい)
 私が特に好きだったのはグリム童話。灰かぶり、白雪姫といったネズミーで扱われた物語は有名だが、他にもグリム童話には名作がたくさんある。中でも私の心に残っているのは「マーレン姫」、そして「つぐみひげの王様」である。
 敵国の王子と恋仲になったマーレン姫は父親に激怒され、七年間塔の中へ幽閉されてしまう。しかしその間に自国は戦争で滅び、王子の行方もしれなくなってしまう。塔から出た姫は、愛しい人を探しに旅に出るのである。
 もう一つの「つぐみひげの王様」は、自分の美しさを花にかけたお姫様の物語だ。あまりにも姫が高慢な為に王は乞食に姫をやってしまう。貧しい暮らしに最初は嘆く姫だが、段々と改心していく話である。因みに、両方とも最後はハッピーエンドだ。
 グリム童話の主人公達は皆、善良で優しく美しい。どんなに辛く、困難な境地に立たされても努力と根性という、決して相容れない要素を上手く使って最後の最後には幸福を掴むのだ。対する適役の待遇は本当に悪い。心根外見共にブス。主人公をいじめることが彼らの生き甲斐であり、そして必ず惨めな最後を迎える。そう、例えば熱く熱された鉄の靴を履かされ苦しみ抜いて死んだり、両の目を小鳥に突かれ盲目になったり。酷いのでは裸にされ無数の釘が打ち込まれた樽に放り込まれ、その上川に棄てられた方もいらっしゃった。嗚呼、悪役って本当に大変。
 しかしこのような「善」と「悪」の対比が明確であればある程、物語に面白さが増すのである。光と影、美と醜といった具合に。
「善良な人にはいつか良いことが起こる」という道理を分かりやすく教えるだなんて、なかなか童話も憎いことをしてくれる。今となってグリム童話を読み返すとそう思えるのは、私の心にゆとりが出来たから?それとも、私が社会に揉まれて擦れた女になったから?まあ、その疑問は水に流して、と。
 とにかく、私は小中高の12年間、童話の世界に明け暮れた日々を過ごしたのである。これで夢見がちな子に育たない筈が無いと思うのだが…。
 現在私は巷で言うロリータファッションに身を包み、白馬に乗った王子様を夢に見る20代を過ごしている。心のバイブルにはめくるめくおとぎの世界。嗚呼、おとぎ話よ、そなたは私の人生にこんなにも感化しましてよ…。
 そんなことを思いつつも私の児童文学好きは収まらず、最近は日本書紀とケルト神話が再ブームを起こしている。誰か、一緒に神話の素晴らしさについて語り合える友達募集中。
 ついでに、白馬に乗った王子様も無期限で募集中である。
 普段は『白馬の王子様なんて信じてる訳じゃない!』とか言ってるけど…これって実は「信じたい」の裏返しなのよね、私にとっては。

「私のお伽創始」


Home